速水選手へのインタビュー

群馬ダイヤモンドペガサスに所属する速水隆成選手は2021年プロ野球ドラフト会議で北海道日本ハムファイターズから育成2位指名を受けました。速水選手は高校を卒業後群馬ダイヤモンドペガサスに入団し今年は6年目のシーズンでした。

高校で野球をやめるつもりが

ー桐生第一高校ではセンバツにも出場しましたね

「チームは強かったけれど、ぼく自身はレギュラーと控えの間を行ったり来たりでした。
3年の夏が終わったときには『ここまでかな』と。
ですからコーチとの面談でも『進学はしません、就職します』とお話しました。
そのとき『ダイヤモンドペガサスはどうだ』と勧められたのです。

ー大学ではなく地元の独立リーグを選んだのは

「自分の残した結果では強豪大学には行けないし、学費の面でも親に負担をかけたくなかったんです。
でも、もし硬式を続けるなら、NPBを目指せる環境でやりたかった。」

ーもしペガサスに入らなかったら?

「…野球はやめて、普通に働いていたと思います。」

カラバイヨの教え

「野球をやめるつもりだった」高校生・速水の運命は、そこから少しづつ動き出す。
トライアウトを経て、群馬ダイヤモンドペガサスに入団。ただ一人の新人高卒選手だった。

ー実際に入団して、どうでしたか

「高校の野球部とは全然違う環境でした。練習には全部意味があって、合理的なわけです。
自分に合っている、と思いました。
それに、先輩後輩はもちろんありますけど、年齢関係なく選手同士の仲がいいです。(NPBという)目標が一緒ですから。」

ー影響を受けた指導者や選手は

「新入団の年、カラバイヨ(フランシスコ・カラバイヨ=元オリックス)が兼任コーチで、いろいろ教えてもらいました。

高校では『手首を返せ』と教わりましたが、彼は逆に『手首は返さなくていい。手首がハンマーのつもりで最短距離で叩け、センターから右中間をイメージして球を押し出せ』と。今のぼくのバッティングはカラバイヨが作ってくれました。
選手では井野口(祐介)さんですね。バッティングはもちろんですが、それ以外の部分、送球や走塁の細かいところまで教えていただきました。(井野口は2021年から兼任コーチ)

例えば『強い球を投げるより正確な球を投げる』。
キャッチャーやっていると、どうしても急いで強い球を投げたくなります。でも、それで0.1秒を縮めるよりは、セカンドベース上に正確な球を投げた方が実際には殺せるわけです。
力まず、キャッチボール感覚でセカンドベース上に投げるようになって、盗塁阻止率が上がりました。正確に投げてセーフになったら、それはランナーが速かったんだと諦める(笑)」

入団テストとNPBドラフト会議

入団3年目の2018年、初めてNPBから調査書が届く。だがその年は指名漏れ。
さらに2020年、首位打者のタイトルを獲得し注目を集めるが、NPBドラフト会議では最後まで名前を呼ばれなかった。

ー指名漏れで、野球をやめることは考えなかった?

「いえ、それはなかったです…やっぱり野球が好きでしたから。

でも(指名漏れで)いろいろと考えました。
188センチ100キロの体格は、NPBではキャッチャーのキャラじゃない。守るならファーストだけど、そこは外国人とベテランの指定席。若い選手を充てるポジションじゃない。つまり自分はニーズがないんじゃないかと。

だったら、スカウトの目を気にするよりも、野球を純粋に楽しんで自分がなりたい選手を目指そう、それで(NPBに)行けたらラッキー、くらいの気持ちになりました。不思議なもので、そしたら成績が上がってきました。」

そしてBCリーグで迎えた6年目の2021年秋。日本ハムの入団テストに呼ばれる。
参加選手は10人ほど。ここで速水はアピールに成功する。

ー北海道日本ハムファイターズの入団テストのことを

「外野手が緊張して、ノックでものすごい暴投をするんです。バッティングでも、みんな力んじゃう。
それを見ながら、みんな緊張しているんだな、大変だな、なんて他人ごとみたいに思っていたら、逆にリラックスできまして。
ぼくは強く振るよりも正確に打ち返すようにしたら、どんどん柵越えで、良い感じで打てました。」

ー普段通りにやったら評価された

「BCリーグ選抜対NPBとの試合も4年連続で出ているし、調査書が来ても指名されなかった経験があるので『ここで受かればラッキーだ』くらいの気持ちでした。グラウンドもよく整備されていてイレギュラーしないし、おまけにボールはよく飛んでくれるし。いい環境だなと。」

その日本ハムから調査書が届き、10月11日、NPBドラフト会議を迎える。

ードラフト会議当日の心境は

「球団事務所で待機しながら、実は大して期待せず、呼ばれなかったら来年はどうしようか、なんて考えていました。
だから自分の名前が出たときは…ひたすらビックリしました。周りは盛り上がっていたけど、ぼうっとしちゃって」

BCリーグという環境

ーこれからBCリーグを目指す若者にメッセージを

「高校や大学と違って練習時間はそこまで長くない。その余った時間をどう使うかが大事だと思います。
群馬だったら、全体練習は3時間くらい。終わったら自由です。遊んだり飲みに行ったりするのもいいけれど、せっかく野球ができる環境にいるのだから、野球のために使って欲しい。
追加の自主練でもいいし、筋トレでもいいし、栄養学の勉強でもいい。その時間をどう使うかで、成長できるかどうかが決まります。少なくとも自分はそうやって来ました。

さらに指導者はNPBで活躍した方がほとんどです。その指導者と半年間ずっと野球ができます。これはすごいことです。
選手にもNPBのスタープレイヤーがいます。西岡(剛)さんや川﨑(宗則)さんと一緒のグラウンドにいるだけでも、学びがあります。
これは学生野球では経験できませんよね。
『独立リーグは大変』といわれますが、野球が上手くなるには最高の環境だと思います。」

日本ハムからの育成指名を受けたとき、一番喜んでくれたのはご両親だったという。

「北海道に行く気満々なんです。違うんだよ、当分は千葉だよ、鎌ヶ谷だよと。だからまず支配下に上がらないと。」

最後は笑顔で抱負を語ってくれた。

【速水隆成(はやみず・たかなり】 1997年7月28日生まれ、群馬県高崎市出身。捕手。
高崎市立並榎中学校で全国大会出場。
桐生第一高校で2年春のセンバツ出場。
2016年からルートインBCリーグ・群馬ダイヤモンドペガサスでプレー。
2020年首位打者・リーグMVP。
2021年リーグMVP。
2021年NPBドラフト会議で北海道日本ハムファイターズから育成2位指名を受ける。

取材協力:群馬ダイヤモンドペガサス

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